AWS re:Invent 2018参加レポート

2018.12.28 News

 

re:Inventとは

re:Inventとは、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)がラスベガスで年に一度開催しているグローバルカンファレンスです。2012年から毎年開催されており、今年で7回目の開催です。2018年11月26日~30日の一週間に渡り開催されました。

re:Inventへの参加者数は年々増加しており、それにあわせて規模も拡大しています。今回は、7つのホテルのカンファレンスルームが会場(キャンパス)として利用され、全世界から50,000人以上、日本からは1,381名が参加しました。

Keynote

Keynote(基調講演)は、AWS CEOであるAndy Jassy氏らから、新サービスの発表などが行われるre:Inventのメインイベントです。
以下のとおり、開催期間のうち3日間、行われました。

日付 タイトル 登壇者
11/27 Global Partner Summit Keynote Terry Wise – VP of Global Alliances, Ecosystem, and Channels
11/28 Keynote Andy Jassy – CEO, AWS
11/29 Keynote Dr. Werner Vogels – Amazon CTO

このKeynote、特にAndy Jassy氏の回は、早朝から並ばなければ会場で聞くことができません。

(Keynoteの待ち行列)

ハウスバンドによる生演奏といった演出も織り交ぜながらKeynoteは進行します。新サービスのほとんどは、このKeynoteで発表されます。登壇者らは現状のサービスについて評価し、それを解決する手段として新サービスを次々と発表していきます。今回は100以上の新サービスと機能アップデートが発表され、そのたびに大きな歓声と拍手が沸き起こっていました。
re:Inventでは、AWSのサービスを学習できるLEARNだけでなく、飲食しながら豪華なパーティを楽しむことのできるre:Play、AWS Partner Network(APN)パートナーが展示を行うEXPOなども開催されます。

LEARN

re:Inventでは、様々なトピックや参加者のレベル別にセッションが用意されています。スライド形式のセミナーだけでなく、Chalk Talk、Hands-on Lab、Workshopなども用意されており、参加者は自分が参加したいセッションを自由に選択してスケジュールを立てることができます。
Keynoteで発表された新サービスに関するセッションは、re:Invent開催中にリアルタイムで追加されていきます。このため、興味のあるサービスの発表があった場合は、Event Catalog(セッションのスケジュール一覧)を確認し、参加申込登録をする必要があります。人気の高いセッション(Deep Racerなど)は、追加後、ものの数分も経たないうちに参加登録が締め切られてしまいます。

(全7会場のアジェンダが繰り返し表示される専用ディスプレイの一部)

re:Play

re:Playは、re:Inventのセッション終了後の夜に開催されているパーティ・イベントで、毎年豪華なDJが招待されています。音楽だけでなく、食事や様々なアトラクションが用意されています。
今回は、11月28日の夜に、85,000人の収容人数を誇るLas Vegas Festival Groundsで開催され、メインDJはDJ. Skrillex(2回目)が招待されました。

(re:Play会場内のDJブース)

EXPO

EXPOでは、AWS Village、Developer Lounge、Sponsor booths、Content Theater、 Partner Theaters、Builders Fair、そしてラウンジと幅広い展示が行われています。多くの企業が出展しており、様々なサービスや事例が紹介されていました。

AWS認定者専用のラウンジ

AWSの認定資格取得者だけが入室できるラウンジが用意されており、そこでは軽食や専用グッズが提供されています。

(AWS認定者専用ラウンジ内の様子)

今回のグッズは認定バッジ、キャップ、二進数Tシャツ、ウォーターボトルでした。

(re:Invent 2018のAWS認定者向けグッズ)

注目の新サービスとアップデート

今回のre:Inventで発表された新サービスとアップデートは100を超えます。すべてを紹介するには紙面が足りませんので、7つのキーワードを提示し、それに沿って紹介していきます。

7つのキーワード

外部環境の変化によりビジネスプロセスを支えるアーキテクチャも変化し続けています。サーバレスマイクロサービスといったアーキテクチャを採用して、業務システムを構築する動きが本格的になってきました。また、サーバレスやマイクロサービスを採用するためには、そのアーキテクチャ向け最適化されたデータベースが必要不可欠です。
そして、このようなアーキテクチャに適合したシステムを効率的に開発できる仕組み(開発者用ツール)、そして完成したシステムを適切に管理、統治するための仕組み(マネジメントとガバナンス)も作りも重要です。

  • サーバレス
  • マイクロサービス
  • データベース
  • 開発者用ツール
  • マネジメントとガバナンス

きたる2020年、モバイル通信技術、第5世代移動通信システム(5G)がサービスインする予定です。スマートフォン等のモバイル通信の進化だけではなく、IoTの次世代の基盤技術になると言われています。インターネットに接続される膨大な数のIoTデバイス、またこれらIoTデバイスが繋がるIoTエコシステムのセキュリティに関する懸念は周知の事実であり、それを解決するソリューションとしてブロックチェーンの技術が注目されています。

  • モバイル
  • ブロックチェーン

ここで挙げた7つのキーワード7つに沿って、新サービスとアップデートを紹介していきます。

サーバレス

近年、オンプレミスからAmazon EC2のようなクラウド上の仮想サーバへの移行が加速しています。クラウド上に仮想サーバや仮想ネットワークを構築する、いわゆるIaaS(Infrastructure as a Service)サービスで環境を構築する場合、クラウドベンダの責任範囲は物理のハードウェア部分まで、利用者の責任範囲は仮想サーバ上で稼働するOS、ミドルウェア、アプリケーション、データ等が一般的な責任分界点となります。一方、ミドルウェアの管理もクラウドベンダが責任を持つサービス提供形態として、Amazon Auroraに代表されるPaaS(Platform as a Service)があります。
このようなクラウドベンダが担う責任範囲が拡大化する動きの中で、サーバレスという考えが登場しました。サーバレスは、クラウドベンダが物理のハードウェア部分からJava VMのようなアプリケーションの実行環境まで管理するサービス提供形態であり、利用者はビジネスロジックの開発に集中することができます。サーバレスの分野はAWSも力を入れており、新サービスとアップデートの開発が活発に行われています。

(Serverless allows you to build increasingly powerful applications, faster

AWSの代表的なサーバレスのサービスとしては、AWS Lambdaがありますが、今回のre:InventではAWS Lambdaに関する多くのアップデートが発表されました。ここでは、そのなかでも注目のアップデートを4つ紹介します。

AWS Lambda Layers

Lambda関数内で利用するライブラリは、そのメイン関数に含めてパッケージングする必要がありました。このため、複数のLambda関数から同じライブラリを利用していた場合、各々のパッケージのサイズが肥大化するだけでなく、ライブラリの修正が必要となった際に、それらを利用するすべてのLambda関数をパッケージングし直す必要がある等の課題を抱えていました。

(AWS Lambda Layers)

この課題を解決するため、AWS Lambda Layersが発表されました。複数のLambda関数から参照されるライブラリをLayer化、つまり共通化してアップロードすることで、個々のパッケージからライブラリを分離することができます。

(AWS Lambda Layers利用前と利用後の比較イメージ)

サーバレスでマイクロサービスを構築するためのアプローチの1つとしてAWS Lambdaが利用されています。複数のLambda関数で共通のライブラリを利用するケースは当然のことながら多く、AWS Lambda Layersの提供によって今後のLambda開発が効率的に進めることができると考えています。

AWS Serverless Application Repository

サーバレスでの開発は各所で行われており、そのアウトプットとしてサーバレスアーキテクチャパターンとそのベストプラクティスが紹介されています。しかしながら、それらのベストプラクティスは、様々なサービスを組み合わせることによって実現されています。どのサーバレスアーキテクチャパターンを採用することが最適であるかを判断し、設計することは容易なことではありません。
前回のre:Inventでは、CloudFormationのテンプレートとして共有可能なリポジトリであるAWS Serverless Application Repository(以下SAR)が発表されました。2018年始から一般利用可能となりましたが、共有されたサーバレスアーキテクチャと同一のアーキテクチャでデプロイすることは可能でも、独自のビジネスロジックを組み込むことができない等の制限がありました。
この課題を解決するために、SARにおいてCloudFormationのネストテンプレートがサポートされました。
CloudFormationのネストテンプレートがサポートされたことにより、抽象度の高いアーキテクチャがSARにアップロードされ、そのアーキテクチャの上に独自のロジックを組み込むことが可能となりました。これにより、サーバレスでの開発が加速されるものと思われます。

Application Load BalancerでのAWS Lambdaサポート

AWS LambdaでAPIを開発する場合、Amazon API GatewayもしくはAWS AppSyncと組み合わせる必要がありました。今回、Application Load Balancer(以下ALB)のターゲットとしてAWS Lambdaをサポートすることが発表されました。AWS LambdaでAPIを開発する際の新たな選択肢が提供されることになります。

(ALBでのAWS Lambdaサポート)

このアップデートにより、AWS Lambdaを用いたAPI開発がより容易なものとなります。例えば、APIに認証機能を実装する場合、Amazon API Gatewayでは認証機能を開発する必要がありましたが、ALBの組み込み認証機能を利用することで、認証機能を開発する必要はなくなります。ALBの特徴を利用することにより、AWS Lambdaを用いたAPI開発を効率的に進めることができると予測しています。

AWS LambdaからのAmazon Aurora Serverless呼び出しサポート

AWS LambdaとAmazon RDSの連携は、アンチパターンとされてきました。Amazon RDSのラインナップには、Amazon Aurora Serverlessという自動スケーリング可能で、オンデマンドベースのサーバレスのRDSも提供されています。しかし、AWS Lambdaはステートレスなプラットフォームであるため、DBのコネクションプールを実装することが困難、また、AWS LambdaをスケールアウトすることによりAmazon RDSへのコネクションが溢れてしまう等の理由から、Amazon RDSとの連携はDynamoDBほど容易ではありませんでした。
この課題を解決するため、Data APIという機能がAmazon Aurora Serverlessに追加されました。Data APIはHTTPSエンドポイント経由でAmazon Aurora Serverlessとの接続が可能になります。このアップデートに伴い、Data API用のクライアントがAWS SDKにも追加され、AWS LambdaやAppSyncからもData APIが呼び出せるようになりました。
これまでのサーバレスアーキテクチャではデータストアとしてRDBMSではなくDynamoDBを利用することがベストプラクティスでした。今後、Amazon Aurora ServerlessのData APIを用いるケースが増えていくと予測しています。

AWS Step Functions でワークフローの自動化

AWS Step Functionsは、サーバレスシステムのステート管理や処理の制御を行うサービスです。本サービスの利用によって、利用者はAWS Lambdaに対して状態を管理するコードの記述が不要となり、本来行いたい処理に関するコードの記述に集中できるようになりました。
しかし、本サービスと統合されていないサービス間の連携のためには、簡単な処理であってもAWS Lambdaを介在させる必要がありました。その際、AWS Lambdaが無駄なラッパーとなってしまうケースが数多く存在していました。

(AWS Step Functions service integrations)

そこで登場したのがAWS Step Functions service integrationsです。DynamoDB、AWS Batch、Amazon ECS、Amazon SNS、Amazon SQS、AWS Glue、Amazon SageMakerといった既存のサービスがAWS Step Functionsと統合され、利用者は無駄なAWS Lambdaのラッパーを開発する必要がなくなりました。

マイクロサービス

モバイル、ソーシャル、IoTなどのデジタルテクノロジーを中心として、ビジネス環境が劇的に変化しています。この様な状況の中、顧客の機会損失を防ぐため、ビジネス・アジリティの向上を目的に単一(モノリシック)のアプリケーションを分解して、開発、管理、拡張のすべてが独立したマイクロサービスアーキテクチャに移行する動きが加速しています。
今回のre:Inventで発表されたマイクロサービス関連の注目の2サービスを紹介します。

AWS App Mesh

マイクロサービスアーキテクチャではサービスの数が多くなるにつれ、各サービス間の通信制御、障害トレース、証明書管理等で複雑さの課題が発生します。この課題のソリューションとして、サービスメッシュという層を設けるアーキテクチャが採用される事が多くなってきていました。
この課題に対応するため、マイクロサービス間の通信方法を標準化し、AWS で実行されているマイクロサービスのモニタリングと制御を容易にするApp Meshというサービスが発表されました。

(AWS App Mesh)

Amazon ECS および Amazon EKS でApp Meshを使用すると、コンテナ化されたマイクロサービスを大規模に実行する障壁は下がりそうです。

AWS Cloud Map

kubenetesではConfigMap、Secretという概念が実装されているため、コンテナから設定を分離する事が容易です。AWS ECSを用いる場合でも、パラメータストアを利用することで同様の事を実現可能でした。しかしながら、フルマネージドではないことから、設定作業が少々煩雑となっていました。
この課題に対応するため、AWS Cloud Mapが発表されました。AWS Cloud Mapは、クラウドのサービスディスカバリに対応したリソースマップです。AWS Cloud Mapを使用することで、アプリケーションリソースの動的な変化に対応できるため、アプリケーションの可用性が向上します。AWS公式ブログ [NEW:サービスディスカバリのためのAWS Cloud Mapとのアプリケーション統合] でも詳細な資料が提供されていますので、あわせて確認してください。
App MeshとCloud Mapの2つのサービスが提供された事で、アプリケーションのコンテナ化の流れは一層加速していく事は間違いなさそうです。

データベース

AWSでは多くのデータベースサービスが提供されています。今回のre:InventではAmazon TimestreamやAmazon Quantum Ledger Databaseが新たに追加され、データベースの選択肢が広がりました。そのデータベースサービスの中でもAmazon DynamoDB(以下DynamoDB)は、NoSQLデータベースとして、その高い信頼性、スケーラビリティ、低レイテンシ、安定した性能等の優れた特徴から広く利用されています。今回のre:InventでもDynamoDBに関するアップデートが発表されました。そのアップデートのうち注目の2つを紹介します。

Amazon DynamoDB Transactions

DynamoDBではトランザクション処理がサポートされておらず、高頻度に操作する処理、または複数のテーブルをまたがって操作する処理には不向きとされてきました。このため、トランザクション処理が必須のアプリケーションでは、独自のトランザクション処理を実装することでしか、DynamoDBの優れた特徴の恩恵を受けられませんでした。しかし、トランザクション処理は一般的に複雑となる傾向にあり、保守面のデメリットが生じます。
この課題を解決するため、DynamoDBのアップデートとして、DynamoDB Transactionsが発表されました。DynamoDB Transactionsでは、原子性(Atomicity)、一貫性(Consistency)、独立性(Isolation)、永続性(Durability)を保証した操作を一つまたは複数のテーブルに対して提供します。
このアップデートにより、NoSQLデータベースサービスであるDynamoDBの利用障壁が下がり、トランザクション処理を要するアプリケーションでもDynamoDBが広く利用されていくものと考えられます。

Amazon DynamoDB On-Demand

これまでのDynamoDBでは、読み込みと書き込みのキャパシティユニットを事前に設定する必要がありました。しかしながら、データへのアクセスパターンが予測不可能な場合、キャパシティユニットを事前に設定することは容易ではありません。そのようなケースでは、Dynamo DB Auto Scalingを利用することで、キャパシティユニットを柔軟に増減させて回避することが一つの解でした。ただし、このAuto Scalingでは急激なアクセスの増減時におけるタイムラグの発生を回避することができません。
この課題に対応するため、事前のキャパシティプランニングが不要で、1秒当たり数千リクエストの通信にも対応でき、従量課金での利用を可能とするアップデートDynamoDB On-Demandが発表されました。
このDynamo DB On-Demandを利用することにより確実にアクセスの増減に対応することが可能となります。

開発者用ツール

近年、DevOpsというワードが注目されるようになってきました。AWSは、DevOpsを次のように定義しています。

プロダクトのデリバリのパイプラインとフィードバックループにおいて「無駄なボトルネックを取り除くことで、ライフサイクルを効率化し、高速化すること」

組織のビジネス競争力を向上させられるかどうかは、DevOpsの考え方をどれだけ開発プロセスに組み込めるかに依存しています。
AWSでは、DevOpsを実践している開発者やIT運用プロフェッショナルが迅速かつ安全にソフトウェアをデリバリできるようにするために設計した一連のサービスを、開発者用ツールとして提供しています。

新旧システムの切り替え構築に新たなサポート

AWS CodeDeployは、様々なコンピューティングサービスへのソフトウェアのデプロイを自動化するマネージドサービスです。
これまでも、利用者がAWS CodeDeployを利用した場合、Amazon ECSとAWS Fargateに対するローリングデプロイは可能でした。ローリングデプロイはクラウドのメリットを活かしたデプロイ方法ですが、一時的に新旧のサーバが混在するため、利用者は操作に注意を払う必要があります。
今回のre:Inventでは、AWS CodeDeployを利用したAmazon ECSとAWS Fargateに対するBlue/Greenデプロイのサポートが発表されました。AWSのコンテナサービスにおいてもデプロイ方法の選択肢が広がりました。

新しい AWS Toolkits

AWS Toolkitは、IDEを使用したアプリケーションの開発、デバッグ、デプロイを容易にするオープンソースのプラグインです。
これまではAWS Toolkit for Eclipse、Visual Studioがサポートされていましたが、今回のre:Inventでは新たにAWS Toolkit for PyCharm、IntelliJ(Preview)、Visual Studio Code(Preview)へのサポートが発表されました。

(AWS Toolkits for popular IDEs)

AWS ToolkitにはSAMを活用したサーバレスアプリケーションのプロジェクトテンプレートが用意されているため、利用者は通常のJavaアプリケーションだけではなくサーバレスアプリケーション開発にもAWS Toolkitを利用できます。

マネジメントとガバナンス

組織としてクラウドサービスを利用する場合、利用者は複数のアカウントを管理することになります。そして、利用者が管理するアカウントが増えた場合でもクラウド上のリソースのセキュリティ、ガバナンス、コンプライアンスを維持するために、AWS利用企業は管理専任のチームを立ち上げる等して対処することになります。管理アカウントが増えれば増えるほど、専任チームの負担が大きくなります。
今回のre:Inventで発表されたセキュリティ、ガバナンス、コンプライアンスの維持をサポートする以下3サービスを紹介します。

Amazon CloudWatch Logs Insights

Amazon CloudWatchは、AWSのリソースとAWSで実行されているアプリケーションをリアルタイムでモニタリングするサービスです。その他にも、Amazon CloudWatchアラームという機能を利用することで、定義したルールに従って通知を送信したり、Amazon CloudWatch Logsという機能を利用したりすることで、様々なリソースのログを収集できます。
しかし、Amazon CloudWatch Logsで大量のログを収集しても、本サービスにはログ分析の機能がありませんでした。この制限のため、利用者はログ分析のためにデータをエクスポートする必要がありました。
そこで登場したのがAmazon CloudWatch Logs InsightsというインタラクティブなCloudWatch向けログ分析サービスです。本サービスの登場により、AWS CloudWatch Logs上でクエリの発行と分析結果の可視化が可能になりました。

AWS Control Tower

これまで利用者はAWS Organizationsというサービスを利用して、複数のアカウントを統合することができました。そして、アカウントを統合することで、利用者は「ロールの切り替え」という機能を利用して、統合されたアカウントに容易にアクセスすることが可能です。
しかし、管理するアカウントが増加すると「ロールの切り替え」を利用した場合でも、利用者は全アカウントへのアクセスに時間を費やす必要がありました。
全AWSアカウントに対して、組織としての共通の環境を整備したい場合に利用できるのがAWS Control Towerです。本サービスの登場で、AWS Landing Zone Solutionとして提供されていたセキュリティベストプラクティスに則ったツールやテンプレートを容易に組織の展開できるようになります。

AWS Well-Architected Tool

AWSには、AWSを利用してシステム構築を行う際のベストプラクティスを集約したWell-Architectedというフレームワークが存在します。Well-Architected Frameworkを利用することで安定した効率的なシステムを構築することが可能となります。
しかし、Well-Architected Frameworkをチェックするツールは提供されておらず、利用者はAWSのソリューションアーキテクトにレビューしてもらうことが一般的で、改善のスピードを上げることは困難でした。

(AWS Well-Architected Tool)

そこで、AWS Well-Architected Toolというサービスが登場しました。本サービスを利用することで、質問に回答するだけで利用者自身が評価を行えるようになります。また、利用者は、具体的にどのような改善を実施するべきかを説明するコンテンツが含まれたレポートを出力することもできます。

モバイル

マイクロサービスの項でも触れましたが、デジタルテクノロジーを中心として、ビジネス環境は劇的に変化しています。データベースを元としたバックエンドAPIと連携するだけでは、顧客ニーズ対応できない事が増えていており、通知、分析、AR/VR等の機能を利用することも増えてきています。AWSではこれらのニーズに対応するため、 AWS Amplifyというサービスを2017年に発表しました。AWS Amplify を利用することによって、開発者は JavaScript アプリケーションを作成する際、一般的な抽象化されたベストプラクティスをプログラムに適用する事が容易となっていました。

AWS Amplify Console

この流れを更に加速すべくAWS Amplify Consoleというサービスが発表されました。AWS Amplify Consoleは、モバイルウェブアプリケーション用の継続的デプロイおよびホスティングサービスです。AWS Amplify コンソールを使用すると、新機能の迅速なリリース、アプリケーションのデプロイ中のダウンタイムの回避、アプリケーションのフロントエンドとバックエンドの複雑な同時アップデート処理が容易になります。
AWSには、CodeStarという類似のサービスがあります。JavaScript アプリケーションであれば、Amplify Consoleが設定作業も少なく、アプリケーション開発に更に集中する事ができます。

ブロックチェーン

現在、ブロックチェーンフレームワーク(Ethereum、Hyperledger Fabricなど)を利用したアプリケーション開発が盛んになってきています。
しかし、ブロックチェーンフレームワークを採用したプロジェクトの中には参加者全てがトランザクションの健全性を担保する必要がある自立分散型アプリケーションである必要がないことが多く、客観的にみてクラウドファンディング(ICO)での資金調達のしやすさが目的の一部であるプロジェクトも散見されていました。
AWSのCEO、Andy Jassy氏は今回の発表に際して「AWS上でブロックチェーンも利用している顧客が大勢いるものの、データベースでは解決できないブロックチェーンの例をそれほど多く目にしたことがなかった」と述べたように、AWSはそのような状況から一歩離れた立場に身を置き、ブロックチェーンのマネージドサービスの提供を見送ってきていました。しかし、顧客へのヒアリングを通じて、真のニーズを理解できたとして、次の2つのサービスの発表を行いました。

Amazon Quantum Ledger Database (QLDB)

フルマネージドな元帳データベースを構築できるAmazon Quantum Ledger Database (QLDB) が発表されました。

(Amazon Quantum Ledger Database)

Amazon QLDBは、すべてのアプリケーションデータの変更を追跡し、時間の経過とともに完全かつ検証可能な変更の履歴を保持します。ブロックチェーン技術で課題となっていたトランザクションの承認スピードも改善されます。

Amazon Managed Blockchain

AWSは、Amazon QLDBで対応できない顧客ニーズに対応するため、Ethereum、Hyperledger Fabricを利用したフルマネージドなブロックチェーンサービスも発表しました。Amazon Managed Blockchainは、ネットワークの作成に必要とされていたオーバーヘッドを削減し、無数のトランザクションを実行している何千ものアプリケーションからの要求に対処できるよう、自動的にスケールアップします。ブロックチェーン基盤の構築は、既存のアプリケーション基盤より構成難易度が高いため、利用者のメリットが大きいサービスと言えます。
顧客ニーズを踏まえてこれら2つのサービスを使い分ける必要があります。AWS公式ページ[AWS におけるブロックチェーン]に整理された資料が提供されているため、あわせて確認してください。

まとめ

今回のre:Inventには弊社からエンジニア4名が参加しましたが、それぞれが良い刺激を受けることができました。
re:Inventはライブストリーム中継も行っているため、発表された情報だけを収集したいのであれば、現地に赴く必要は全くありません。しかし、ラスベガスという異国の土地、50,000人を超える参加者、7つのホテルのカンファレンスルームを利用するスケールの大きさ、早朝から並ばなければライブで見る事が出来ないKeynoteとその演出、Keynoteでの新サービス発表後に速やかに補完されるsessionやworkshop、re:PlayやPub Crawl(パブ巡り)といった大人の遊び場の提供等、re:Inventがエンターテイメントそのものであり、この熱量は現地に赴かなければ得られません。
AWS CEOのAndy Jessy氏がKeynoteで「あらゆる分野で他のクラウドベンダより多い選択肢と奥深さ(Deep)がある」と語ったとおり、QLDBやTimestreamが加わったデータベースラインアップは更なる広がりを見せました。

(AWSのデータベースラインアップ)

また、AWS Step Functionsの連携サービス群の拡充やAmazon Connectを中心とした各マネージドサービスとの連携等、Keynoteや個別セッションを通じて、AWSの「選択肢の広さと奥深さ(各サービス群の結びつきの強さ)」を改めて強く肌で感じることができました。

(マネージドサービスとの連携)

Keynoteでの新サービスの発表と演出、畳み掛ける新サービスの発表内容は、クラウドNo.1ベンダーの座を維持するためのものではなく、最強の捕食者と言われるAmazonが、小売業界のみならずIT業界を、更にはITを利用するすべての業界をも飲み込んでいく勢いを強く感じさせられるものでした。
このような時代で成長力を維持し続けるために、IoTやAIといったIT領域をクラウドネイティブで自在に操ることができるテクニカルスキルと、これら要素技術を組み合わせてクライアントのビジネスモデルにベストマッチさせるソリューション提案スキルの両方を強化させていくことが肝要であると、身の引き締まる思いにさせられたラスベガスでの1週間でした。

著者紹介

廣末 丈士

西村 翼

荒井 亮人