「サーバーレス基盤の営業支援ツールの構築を依頼。運用コストは従来方式の10分の1に。」

アルヒ株式会社 企画本部 システム部 マネージャー 神﨑 日子太氏、法人営業本部 店舗開発部 兼 企画本部 マネージャー 岩﨑 愛氏、法人営業本部 店舗開発部 兼 企画本部 シニアアソシエイト 村井 希望氏にARUHIタスカル、ARUHIソロエルの構築をBTCに依頼した背景と効果について伺いました。

―― 今回、BTCには何を依頼されましたか。

お客様から店舗(直営店・フランチャイズ店)に来店または電話でお問合せがあった際、借入希望金額や年齢、年収などの基本情報を入力するだけで、多様な当社の住宅ローン商品ラインナップから、お客様が申込み可能な商品を自動判定する営業支援ツール「ARUHIタスカル」の構築を依頼しました。

また、店舗で住宅ローンを申込んだお客様の購入物件や収入に関する情報を入力することで「必要書類が揃っているか」「捺印がされているか」などをタブレットやスマートフォン等の端末上で確認できるサポートツール「ARUHIソロエル」の構築も依頼しました。

ARUHIタスカル・ARUHIソロエルの利用イメージ

店舗担当者の営業経験や商品知識への依存がネック

―― 導入前の課題をお聞かせください。

当社では、日本全国の店舗の営業員が、個々人の知識やスキルに依存せず住宅ローンを提案・販売することを可能とするシステムの構築が急務となっていました。

<ARUHIタスカル導入前の課題>

店舗に対しては、集合研修やeラーニングで教育を行っていますが、10種類以上におよぶ複雑な住宅ローンや関連商品を覚えてお客様に説明・提案することは、経験の浅いフランチャイズ店や若手社員には容易ではありません。

また経験豊富な担当者においても、お客様の年齢・年収・物件情報をヒアリングし、どのような商品を候補として選択した上で、最終的なご提案をしているのかプロセスが可視化できていない問題がありました。

<ARUHIソロエル導入前の課題>

住宅ローンの申込には物件書類や収入書類など10種類以上の書類が必要です。加えて、物件の種類や収入形態により必要書類が異なるため、確認作業が複雑化していました。

もちろん店舗には申込に必要な書類についても教育していますが、定着には時間が必要です。実際、本社での審査中に、書類の不足や捺印漏れに気付くことが多々ありました。

その場合、本社審査部門が店舗に連絡し、そこからお客様に連絡するため、リードタイムが発生してしまいます。リードタイムは契約の遅れにつながり、物件購入希望者が複数いる場合は、その間に別の人に決まってしまうこともあります。

このため、住宅ローンの提案および申込に必要な書類の確認作業において、担当者の営業経験や商品知識に関わらず、お客様へより正確かつ迅速に提案し、申込手続を進めることができるシステムの開発に着手しました。

BYOD端末(※)で誰でも手軽に操作できる ※Bring Your Own Device:私物端末の業務利用

―― システムに求めた要件を教えてください。

<BYOD端末で操作できること>

ハードウェアについての学習が不要となる、各人が慣れた個人所有のスマートフォン(BYOD端末)で操作できるシステムを前提にしました。

<十分なセキュリティ対策>

セキュア・ブラウザーでのアクセス、シングルサインオンで利用できること、そしてセキュリティの観点から個人情報をローカルにキャッシュしないことを要件としました。

<分かりやすい操作性>

フランチャイズ店の方々は年齢層が幅広く、ITリテラシーにも大きな差があります。そこで、分かりやすく誰でも使える操作性が望ましいと考えました。

<提案履歴の見える化>

現在、申込後の商品は分かるものの、その間「どんな提案したのか」といった経緯までは分かりません。そこで、提案履歴をたどって「提案の見える化」を行い、分析までできればと考えました。これが可能になれば、今後、お客様に最適な住宅ローンを最短で提案できるようになると考えています。

サーバーレス基盤の提案が秀逸

―― BTCをベンダーに選定した理由は。

ARUHIタスカルとARUHIソロエルは別々のプロジェクトで、当初はARUHIソロエルのベンダー選定から行いました。声掛けした4社の中から、以下理由でBTCを選定しました。

<サーバーレス基盤を用いた安定性と低コスト>

BTCの提案は、サーバーレス基盤でアプリケーション開発やセットアップが可能なクラウドサービスを活用するものでした。一般的にはFaaS(Function as a Service)と呼ばれるもので、サーバーレス基盤を用いたモバイルWebアプリケーションであれば、利用した分しかコストが生じないとのこと。実際、提案書にあったシミュレーションでは驚くほど低コストでした。

<インフラ維持の負担を極小化>

上記に加え、システム基盤はAWSのマネージドサービスを活用し、モニタリング、パッチ管理、セキュリティ、バックアップなどの保守作業がAWSにより自動化された構成となっていました。システム基盤を維持するための体制構築が不要となり、運用コスト・負担を大きく抑制でき、我々は業務アプリケーションの構築・改修に専念することが可能な点も魅力的でした。

<拡張性の高さ>

アプリケーションはマイクロサービスで疎結合に構築されており、柔軟性と拡張性に優れた基盤で、今後、改修や新機能を追加する際もフレキシブルに対応できる点が魅力でした。

<ビジネスに対する深い理解>

上記に加え、BTCは当社の別領域でもプロジェクト実績があり、住宅ローン業界や当社のビジネスを熟知している点でも、安心してシステム構築を任せられると考えました。

―― ARUHIタスカルの構築はどの段階でBTCに依頼したのでしょうか。

2018年5月にARUHIソロエルの構築が始まり、その後ARUHIタスカルも加わりました。もともとは、店舗におけるサービス品質の均質化のため、各住宅ローン商品を動画で説明する仕組みを想定していました。動画を見せた後に見積シミュレーションやメール送信といったフローにつなげたかったのですが、「動画ありき」ではなく、システムから動画を選択するフローが望ましいと判明し、見直し方針を検討していたときに、構築中のARUHIソロエルを知りました。

ARUHIソロエルの基盤にARUHIタスカルも乗せることができ、入口の集約(メニューでどちらかを選択)も可能であるなど、親和性が高いことから、ARUHIタスカルの構築もBTCへ依頼しました。

とにかく運用コストが安価

―― 導入後の効果・評価をお聞かせください。

ARUHIタスカル、ARUHIソロエルを実際に触った店舗の方々からは一様に、今までにないツールとして驚きがありました。特に新規フランチャイズ店では、便利なツールとして積極的に活用いただき、以下のような効果が得られています。

<外出先からBYOD端末を使って利用できる>

住宅ローンの提案や書類の確認といった作業を、店舗担当者が外出先で行えるようになりました。以前は店舗のPCで入力する必要があったため、手間も時間も大幅に削減できたと感じています。慣れたスマートフォンをそのまま使えますので店舗担当者からも好評ですし、端末内には情報が残りませんからセキュリティ面も安心です。

<従来の10分の1以下のコストで利用可能>

サーバーレス基盤を用いたモバイルWebアプリケーションを構築したことで、利用した分しかコストが生じません。夜間・週末など、利用していない時間帯のコストは生じないため、運用コストは従来の方式で構築した場合と比べて10分の1以下となり、狙い通り低コストでのシステム運用を実現しています。

<シングルサインオンでアクセス可能>

既存の認証基盤とモバイルアプリケーションの認証連携により、シングルサインオンでアクセスすることができます。さらに、全店舗担当者の一元的なユーザー管理も可能になりました。

―― 今後の展開をお聞かせください。

ARUHIタスカル、ARUHIソロエルの導入は一部店舗にとどまっており、これから全ての店舗での利活用、浸透を進めていきます。お客様のためになるツールを追加していくこと、利用者がより分かりやすく使いやすい環境を構築していくことで、ツールの利活用が促進され、蓄積されたデータをもとに分析・改善を実施し、より良い提案と効率的な業務運用を進めていきたいと考えております。

BTCのコンサルティング力に期待

―― BTCに対する今後の期待をお願いします。

現在は将来を見据えた完成形のシステムを構築していますが、足元で解決すべき課題もいくつかあります。例えば、お客様から預かった書類に対して紙の預り証を発行するのですが、紙があることでフローが煩雑化します。預り証をメールで発行する自動化システムなど、現在のシステムと連携した効率的なシステムをBTCと一緒に考案できたらと考えています。

我々はARUHIタスカル・ARUHIソロエルの構築を通じ、業務のコンサルティングからシステム開発まで一貫して支援可能なBTCの価値を実感しました。今後もBTCのサポートには大きな期待をしています。引き続き、よろしくお願いします。

※記載されている会社名、製品名等は一般に各社の登録商標または商標です。
※事例に記載された社名・部署名等の情報は取材当時のものです。閲覧時点には変更されている可能性があることをご了承ください。
取材:2019年10月

ARUHI について

ARUHI は国内最大手の住宅ローン専門金融機関です。とくにフラット35の取扱件数では9 年連続で国内第一位です(*1)。近年は、住生活総合プロデュース企業となるべく、プラットフォーム事業にも力を入れています。

東証一部上場、全国152拠点(*2)、年間営業収益238億円、従業員数327名。
*1:2010年度~2018年度統計、取り扱い全金融機関のうち借り換えを含む【フラット35】融資実行件数(2019年3月末現在、ARUHI調べ)」
*2:2019 年9月末現在
(※ 本事例記載の数字・事実はすべて、事例取材当時に発表されていた事実に基づきます。数字の一部は概数で記載しています)