【事例紹介】入国時の税関申告をWEBサービスで電子化 AWSサーバレスアーキテクチャで開発期間の短縮を実現

税関は、「適正かつ公平な関税等の徴収」、「安全・安心な社会の実現」、「貿易の円滑化」を目的として国内関係機関や関係業界、さらには各国の税関や国際機関などと連携・協力しながら、適正な税関行政の運営に取り組まれています。

日本入国時における「携帯品・別送品申告書」は上記目的のもと、テロの未然防止や密輸阻止を図りつつ、迅速な通関を行うために全ての方に提出が義務付けられている申告書類です。この申告書提出は、2019年4月より電子化が進められており、税関検査場に設置されたキオスク端末(電子申告端末)を使用し税関申告アプリ(スマートフォンアプリ)で作成した二次元コード及びICチップが内蔵されたパスポートをかざして電子的に税関へ申告が可能となっています。電子申告後は顔認証により自動的に本人確認と申告内容の確認を行い、迅速に電子申告ゲート(Eゲート)を通過できる仕組みとなっています。Eゲートは国内7空港(注1)に導入され運用中の状況です。

電子申告を行う場合は、税関申告アプリ(スマートフォンアプリ)をiOSまたはAndroidの公式アプリ配布サイトからスマートフォン等にインストールしたうえで、アプリ内で携帯品・別送品申告情報を入力し、当該情報を含む二次元コードを生成する必要があります。次回入国時に入力内容を再利用することも可能であるため、入力の負荷が低減され、頻繁に渡航する利用者にとっては非常に利便性の高いサービスとなっています。

一方で、頻繁な渡航を予定していない低頻度での利用者にとってはインストール自体が手間であったり、利用頻度の低いアプリを自身のスマートフォンに持ち続けたりすることが敬遠要素となっており、利用者数のさらなる拡大と電子申告の定着率の増加を達成するためには、より汎用的な入力チャネルの提供が必要とされていました。公式アプリ配布サイトからのインストールが制限下にある一部の外国籍利用者も考慮のうえ、一般的なウェブブラウザからアクセスできるWEBサービスとして税関申告アプリ(スマートフォンアプリ)と同等の機能(サービス)を提供することが税関の次のミッションとなりました。また、新型コロナウィルス感染症対策の観点から、税関手続きを行うエリアにおいての接触や人の滞留を可能な限り低減させることが急ぎ求められる状況になったこともあり、短期間での開発及びサービス開始が期待値として潜在するものでした。

BTCは公共セクターや、クラウドネイティブなインフラ・アプリケーション開発に強みをもっており、このWEBサービスの開発を担当させていただくこととなりました。CIQ(税関:Customs、出入国管理:Immigration、検疫:Quarantine)と表現される入国手続きのうち、空港検疫所の業務を支援するシステムで類似サービスの開発を支援させていただいた際の知見も活かし、短期間で品質の高いサービスを提供できる見込みがあることの実績面も添えて、AWSを用いたサーバレスアーキテクチャにより、スピーディにシステム開発を行うことを提案させていただきました。

 

(注1)2022年6月時点で、成田空港、羽田空港、関西空港、中部空港、福岡空港、新千歳空港、那覇空港に導入済み

CloudFront+S3のサーバレスアーキテクチャにより短期間開発 マネージドサービスを多く活用した構成により安定稼働と運用コスト低減に寄与

「携帯品・別送品申告書」では入力(申告)する項目は規定の様式どおりで定まっていることに加え、申請情報は二次元コード(QRコード)として利用者のデバイスにのみ保持するため、S3にコンテンツを配置し、これをコンテンツ配信ネットワーク(CDN)サービスであるAmazon CloudFrontを用いて配信する基本構成でご提案しました。コンテンツが分散してキャッシュされるため読取りパフォーマンスの向上が期待でき、低レイテンシーの高速データ転送に寄与します。また、AWS Shieldと統合してDDoS攻撃からシステムを保護するとともに利用者に対してセキュアなシステム利用の提供が可能な構成です。

上記基本構成に加えて、監視やセキュリティを中心にAWSの各種マネージドサービスを採用することで、セキュリティ対策レベルの維持と運用(監視)の自動化を図る設計とし、24時間365日のシステム安定稼働と運用コストの低減に寄与する構成としています。AWSのマネージドサービスが提供する高信頼性・高可用性がこの構成を支えるベースとなっています。

このようなマネージドサービスをフルに活用したサーバレスアーキテクチャでシステムを構成することで、実質的な開発・構築期間は約2ヵ月程度、外部セキュリティ専門会社によるセキュリティ脆弱性診断やEゲート本番環境との総合的なテスト等を経てトータルでは約3ヵ月後には正式リリースを迎えることができ、短期間での高アジリティ開発ができた事例と言えます。

今後は利用状況の分析をもとに改善プランを検討

携帯品・別送品の申告を電子化するWEBサービスの提供は達成済みの状況にあり2022年3月末より安定した稼働を継続している状況ですが、電子申告利用者の増加とその定着に関しては継続的な監視を行い、アクセス数や利用者数推移、利用者動向等のデータを分析してサービスの改善余地について、定期的にお客様とディスカッションを行っていくことを予定しています。

BTCは、今後もクラウドネイティブなアプリケーション開発やクラウドマイグレーションなどの支援を通じて、公共部門でのクラウド導入の動きに寄り添い、技術力で貢献してまいります。