特別対談:TBSテレビ様×BTC ERPリプレイスにおけるRPAの活用効果とその進め方

特別対談:TBSテレビ様×BTC ERPリプレイスにおけるRPAの活用効果とその進め方

株式会社TBSホールディングスは、 2020年11月より運用を開始した新たなERPによる新会計システムのリリースと同時に、Blue Prismの活用を開始しました。2018年から本格的にスタートした「会計システム更新プロジェクト」ではERPのリプレイスと同時進行でRPAの新規導入が行われ、株式会社ビッグツリーテクノロジー&コンサルティング(以下、BTC)がその支援を担当しました。

今回は、本プロジェクトを推進したTBSテレビ ICT局の加藤克行様と、同社のRPA導入を支援したBTC RPA事業部の福本が対談。ERPリプレイスとRPA導入を同時に行った狙いと難しさ、ERPにBlue Prismを選定された理由、そして得られた成果を語っていただきました。

左)株式会社TBSテレビ ICT局システム開発部 加藤克行様
右)株式会社ビッグツリーテクノロジー&コンサルティング RPA事業部 シニアマネージャ 福本俊之

プロジェクトの背景・課題

― まず初めに、お二方の業務内容を教えてください。

TBSテレビ加藤様:いまや放送業界もテレビ、ラジオに加えインターネット配信が当たり前となり、デジタル化、IP化が進んでいます。私の所属するICT局はTBSの情報システム部門として、200を超える社内システムの運用・保守ならびに先進技術の導入検討や、新たなシステム開発・構築時にベンダーとユーザー部門をつなぐといった役割を担っています。

BTC福本:私たちRPA事業部は、お客様企業のRPA導入にあたりコンサルティング、PoCから実際のロボット製造、そして運用・保守までをワンストップでサポートします。BTCは創業以来、テクノロジーとコンサルティングの両方を核にビジネスを培ってきました。その経験を活かし、上流から下流までを1社で完結できる強みを持ちます。

― 今回のプロジェクトの背景と課題について、お聞かせください。

TBSテレビ加藤様:当社が2000年頃から利用してきたERPシステムの老朽化と、各種保守契約が期限を迎えたことがそもそもの発端で、この機会に会計システムを全面的に刷新することになりました。

テレビ局の会計システムは関係会社やアルバイトなど多くの方が経費精算処理を行う事や、テレビやラジオの番組制作に関係するものとそれ以外では伝票の承認ルートが異なる点など、かなり特殊な事情があります。そのため当社で利用するERPは長年に渡り多額の費用をかけて改修を行う必要がありました。その結果、開発したトランザクションは500を超え、最終的には誰も全体像を把握しきれないほど複雑なものになってしまいました。

そこで今回のERP刷新にあたっては、オンプレミスではなくクラウド型を活用することに加え、現行の業務に合わせて足りない機能をカスタマイズするのではなく、システムの基本的な機能に業務を合わせてゆくことでコストの圧縮を図る…という基本方針を定めて、開発を推進しました。

― こうしたERP刷新のプロジェクトにおいて、RPAはどのような効果が期待されるのでしょうか?

BTC福本:大手ERPの2025年問題がよく取りざたされますが、ERPのリプレイスは巨大なプロジェクトとなり、どうしてもユーザーの手元の作業など細かな部分へのケアがおろそかになりがちです。そのため従来のERPよりも利便性が劣る、あるいは新システムの制約上これまでと同じ機能が持てない、といったケースは少なくありません。

それを防ぐにはアドオンでの機能開発を実施することになりますが、そうすると予算や工期が膨らんでしまいます。その課題解決策として、新システムへの移行に伴う手作業の工数圧縮や、新システム運用開始後にERPと他の業務システムをつなぐ役割として、RPAを導入されるケースが増えています。

ERP Blue Prism選定理由

― 今回、ERPにBlue Prismを選定した理由は、何だったのでしょうか?

TBSテレビ加藤様:会計システムは監査の観点からも不正防止やセキュリティについてかなり高いレベルの管理を要求されます。そのためRPAソリューションの選定にはかなり時間をかけて、慎重に検討を実施しました。私も様々なセミナーに参加して情報収集しただけでなく、実際にいくつかのRPAを試験導入し、自分自身でロボットを試作してその挙動を確認しました。

そんな中で、Blue Prismは発祥がイギリスのバークレイズ銀行ということもあり、統合管理の考え方がしっかりしていて、ログなどの管理機能も非常に充実していることを知り、これなら監査の面でも安心だと感じました。ですので、最終的には我々の要件を満たすRPAはBlue Prismしかない…との結論に至りました。

BTC福本:加藤様にお話しいただいたとおり、Blue Prismは秘匿情報の管理やログの収集・分析など、管理機能が非常に充実しているのが特長です。昨今、既に導入済のRPAツールを見直す動きも増えていまして、そこでもセキュリティの強固さと共に中央集権的なガバナンスが効き『承認されていない勝手なロボットを作らせない』RPAとして、Blue Prismを選ばれるお客さまは多いですね。

RPA導入後、現場で俗に言う『野良RPA』が次々に生まれ、それが誤作動して業務に支障をきたすケースが増えました。RPAにおいては「やらせていいことといけないこと」の判断は現場の方では難しいですから、いま会社としてRPAとうまく付き合っていく方法として、統合的な管理の仕方を模索されている企業が多いように思います。

RPA導入支援提案・BTCの特長

― RPA導入支援でBTCに期待したこと、提案時に感じた他社との違いはございますか?

TBSテレビ加藤様:今回は「ERPの構築を完了し新会計システムをリリースするタイミングで、同時にRPAの利用を開始したい」という現場の意向が強かったのですが、会計システム本体の開発が遅延したこともあり、RPA開発のための時間が十分に確保できませんでした。

そのため、RPAの特性や機能については自社で学びある程度理解できたものの、スムーズな構築と導入のために他社のベストプラクティスや、ロボット構築時にどのような点に注意すればよいのかなどといった点は、経験豊かな専門家にサポートをお願いしたいと考えました。そこでRPAベンダーの方々とたくさん話をさせていただいたのですが、なかなかこちらの期待するレベルのパートナーに巡り合えず苦労しました。

当時はまだRPAの市場が今ほど成熟していなかったこともあり、ベンダー側の経験やスキルも千差万別。具体的にロボットを製作する依頼をしたのに、単なる製品の標準機能の説明しかしていただけなかったり、あるいはこちらの求めている要件以上に慎重かつ丁寧な作業を想定されてしまったために、想定外に長い構築期間と多額のコストを提示されたりしたこともありました。

そんな中で、懇意にしていたBlue Prism社の営業担当様にBTCさんをご紹介いただき、福本さんとお会いしました。福本さんはこちらのやりたいことや求めていることをすぐに理解し弊社が求めるサポート内容を正しく把握してくださったので、納得のいくコストと納期での提案をいただけました。今だから言えますが、パートナー選びはBTCさんの圧勝でした。

BTC福本:それは初めてお聞きしました。加藤様から提案依頼の段階でやりたいことを非常に明確にお示しいただき、具体的な情報も提示されましたので、当社の持つケイパビリティとの相性はよかったと感じていましたが、提案内容にそこまで差があったとは驚きました。

構築プロジェクト・苦労した点

― 構築プロジェクトの進行についてはいかがでしたか?

TBSテレビ加藤様:福本さんとは常に的確に要点を捉えた、最低限かつ必要十分な簡潔な情報のやり取りができましたので、今回のプロジェクトは非常にスムーズに進行しました。

そんな中、今回はERPの構築と同時進行だったことから、ロボットが実際に処理を行う新会計システムの画面が開発中のものしか用意できなかったり、実際に人間が処理する業務プロセスや運用フローがしっかりと固まる前に、RPA構築をスタートさせなければならなかったりしたのが難しい点でした。

本来ならRPA開発は人手による業務処理が固まってからロボットを構築するものだと思いますが、今回はスケジュールの問題でERPが検証環境で試行中にもかかわらずロボット製作を行わなければならないということで、BTCさんにもご負担とご苦労をおかけしたかと思います。

BTC福本:Blue Prismには環境切り替えの機能があり、当社にもノウハウがあるのでその点が活きたと思います。

そういう仕掛けがなかったら厳しかったでしょうね。ウォーターフォール型で仕様をしっかり固めて進めるやり方も大事ですが、RPAの挙動を実際に見ていただいて、それをイメージしながら業務とRPAを同時に組み立てていくやり方もあります。

あとはそこをクイックに繰り返して詰めていくのですがその都度、加藤様が社内を取りまとめて提示いただく情報も正確だったので、手戻りはそれほど多くありませんでした。

TBSテレビ加藤様:今回BTCさんには新会計システムの稼働までに3カ月で9つのロボットを製作していただきました。

先ほどお話ししたようにまだフローが固まっていない業務については福本さんに直接その内容を担当部署のユーザーからヒアリングしていただいたものもあったのですが、こちらの期待通り、RPA化にあたって注意すべき点などを素早くピックアップし、ロボット製作の上で決めなければならないポイントをうまくとりまとめていただけました。

他のベンダーでは新会計システムのリリース時期に少しどころか、大きく間に合わなかったと思います。実際、あるベンダー様から構築に6か月かかると言われたあるロボットを、BTCさんは2~3週間あっという間に仕上げてくださいました。

成果・運用状況

― プロジェクトの成果と、その後の運用状況についてお聞かせください。

TBSテレビ加藤様:おかげさまで月次の締めのタイミングで実行する大量のデータ入力など、事前に担当部署から「これがなければ会計処理がまわらない」と構築を依頼されていた業務を処理するロボットは2020年11月の新会計システムリリース前に無事に完成し、稼働を開始しています。

現在まで大きな問題はありません。ごくまれに、なんらかの原因でロボットが正常動作せずに異常終了することもありますが、その際はまず我々TBS側で当該ログの解析などを行い、問題箇所の切り分けを行った上でBTCさんにご相談させていただいていますが、こちらも迅速かつ的確に対応してくださり感謝しています。

リリースから約半年が経過して、Blue Prismはいまや当社にとってなくてはならない会計システムの一部となっていると思います。

BTC福本:TBS様のように社内でしっかり対処されるお客さまにはコスト的にもライトなサポートプランを、一方すべてお任せいただける運用支援もご提供しています。

昨年からはコロナ禍でリモートでの監視を希望されるお客様も多いので、そういったアドホック型の支援も行っています。様々なお客様の運用ニーズにマッチしたサポートが、ご提供できるようになったと感じています。

TBSテレビ加藤様:BTCさんには導入から構築、運用支援を一気通貫で対応いただけているので、何か不具合が起きた時も話が早いですし、対応も迅速で助かります。

BTC福本:RPAの構築はお客様の業務を理解する、ロボットを構築するといった一つ一つのサイクルが短いソリューションですので、当社としては一気通貫でご支援することがポリシーです。そのことで、お客さまにもメリットを感じていただけると嬉しいです。

今後の展開・期待

― これから考えておられる展開と、BTCへの期待をお聞かせください。

TBSテレビ加藤様:これまではユーザー部門が希望する業務のRPA化が主でしたが、今後は情報システム部門からもAI-OCRとの連携などにより、目検により不正が疑われる伝票を抽出するという煩雑で面倒な業務などを、RPAを活用して人間の業務負荷を低減させるような提案もしていきたいと考えています。

また、先行して導入したRPAに処理させている業務を、Blue Prismに切り替えて統合管理することも検討しています。個人的には、今回のプロジェクトを通じてBTCさん以上にコストとパフォーマンスを発揮いただけるパートナーはなかなかいないと実感しましたので、これからもご協力いただければ嬉しいです。

BTC福本:ありがとうございます、ご相談お待ちしております。BTCとしてもこれからRPAの構築と運用に加えて、定着支援、活用促進のためのご支援にも注力していきたいと考えています。本日は、貴重なお話をありがとうございました。