– 制御システムへのAI導入事例、特に制御システムのパラメータ調整(以下、「制御パラメータ調整」と言う。)に関わる事例を紹介し、広く認められるビジネス価値を要約する。
– 制御パラメータ調整業務に一般的な説明を与え、用語/前提を整理する。
– 制御パラメータ調整へのAI導入プロジェクトを開始する前提として、制御パラメータ調整のシステム化対象範囲を決定する必要がある。
– システム化対象範囲を決定するための具体的な手順として、4節では、自律化レベルを選定する方法を示す。
– 制御パラメータ調整へのAI導入を進める上で核となる決定事項に、統計手法/機械学習手法の選定がある。
– これに先立ち、制御パラメータ調整の数理的定式化が必要となる。
- 最適化問題としての定式化を紹介する。
– 5節で紹介した最適化問題としての定式化を前提として、Fit&Gap分析により最適化手法を選定する際の構成例を示す。
– 6節で説明した構成に基づきFit&Gap分析を実行する上での、制御パラメータ調整自律化特有の考慮事項を挙げる。
– 2節-7節のまとめ。
ビジネス事例 | ■ ロボットアーム制御事例[4]。 ■ ディープラーニングを用いる。 |
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■ エレベータの保守管理業務におけるパラメータ調整最適化事例[5 | ||
学術事例 | ■ DCモーターのPIDコントローラのパラメータ調整最適化事例[7]。 ■ 自己教師付き学習の一種であるCohort Intelligenceを用いる。 |
項目 | 説明 | |
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対象制御システム | ■ パラメータ調整の対象となる制御システム。 ■ 実行条件に応じた、適切なパラメータ調整の下での利用を前提する。 ■ 典型的には、対象制御システムは高度なドメイン固有知識に基づいて設計されており、(パラメータ調整の不要ないし容易な)より利便性の高いアプリケーションへのリプレイスが困難。 |
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実行条件 | ■ 対象制御システムを実行する際の環境や周辺システムに関する条件。 ■ 典型的には、対象制御システムのユースケースにおいて多様な実行条件が想定され、それぞれの実行条件に応じたパラメータ調整が必要となる。 |
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制御パラメータ調整者 | ■ 与えられた実行条件に応じたパラメータ調整を遂行する。 ■ 実行条件に関する情報(以下、「実行条件情報」と呼ぶ。)を受け取り、これに基づいてパラメータを調整する。 ■ 典型的な実行条件情報として、入力値/理想出力値のサンプルデータセットが挙げられる。 |
課題 | 概要 | |
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属人性 | 熟練担当者に依存した属人性の高い業務となること。 | |
リードタイムの長さ | 熟練担当者による制御パラメータ調整のリードタイムの長さが業務フロー全体におけるボトルネックとなること。 | |
品質管理基準の曖昧さ | 制御パラメータ調整が熟練担当者の経験や直感に強く依存し、品質管理管理基準が曖昧となること。 |
レベル | 対応LoA | 概要 |
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監督者補助付き制御パラメータ調整 | レベル2-3 | ■ 監督者による実行条件情報のインプット及びハイパーパラメータの設定を受けて、制御パラメータを調整、調整済みパラメータを監督者に報告する。 ■ ここで、ハイパーパラメータの設定は監督者による手動運用として残す。適切なハイパーパラメータの設定自体が一定の複雑性を持つ可能性があり、その場合、制御パラメータ調整の処理は監督者の試行錯誤に基づき反復的に実行され得る。 |
監督者補助なし制御パラメータ調整 | レベル4-5 | ■ 監督者による実行条件情報のインプットを受けて、制御パラメータを調整、調整済みパラメータを監督者に報告する。 ■ 【監督者補助付き制御パラメータ調整レベル】と比較して、制御パラメータ調整システムの責務範囲にハイパーパラメータの自己設定を含む点が異なる。このレベルの自律性は、例えば、制御パラメータ調整の品質を安定させ、リードタイムを短縮しようとする過程で求められる。 ■ ここで、調整済みパラメータを実際に採用するかどうかには、監督者の判断の余地を残す。 |
調整済み制御パラメータ設定 | レベル6-6.5 | ■ 制御システム実行環境監督者からの実行条件情報のインプットを受けて、制御パラメータを調整、調整済みパラメータを設定したアプリイメージを配布する。設定した制御パラメータは監督者に報告される。 ■ 【監督者補助なし制御パラメータ調整レベル】と比較して、実行条件情報のインプット主体が制御システム実行環境監督者である点、及び調整済み制御パラメータの設定に監督者の意思が関与しない点が異なる。このレベルの自律性は、例えば、制御パラメータ調整システムの運用コストを低減しようとする過程で求められる。 ■ ここで、実行条件情報のインプットはアプリ利用者の本意であり、特に、調整済み制御パラメータの設定はアプリ利用者の関知を伴う。 |
実行条件の能動的取得に基づく調整済み制御パラメータ動的設定 | レベル7-8 | ■ 対象制御システムが実行条件情報を能動的に収集し、制御パラメータ調整システムと通信することで、調整済み制御パラメータを取得、次いで自己設定する。一連の処理内容は、監督者による問い合わせに応じて報告されなくてはならない。 ■ 【調整済み制御パラメータ設定レベル】と比較して、実行条件情報収集から調整済み制御パラメータ設定までの一連の流れにおいて、アプリ利用者/監督者の意思が関与しない点が異なる。このレベルの自律性は、例えば、制御システム実行環境ごとの実行条件が動的に変化し制御パラメータ調整が高頻度で必要な場合に求められる。 |
■ 許容領域\( X \)
■ 目的関数\( f:X\rightarrow\mathbb{R} \)
最適化問題\( (X, f) \)の最適解とは、任意の\( x \in X \)に対し\( f(x_0) \leq f(x) \)を満足する\( x_0 \in X \)を指す2厳密には、これは最小解と呼ばれ、その双対概念を最大解と呼ぶ。一般に最適解は最小解または最大解を指す。。
大分類 | 小分類 | 最適化手法 | 概要 |
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離散最適化 | ー | ー | ー |
数理最適化 | 勾配法 | DNN | ■DNNの学習による最適化。 ◇DNN = Deep Neural Network ◇広義にはFFNNのうち特に階層の深いネットワークを指す。 ◇狭義にはRBM(= Restricted Boltzman Machine)やAE(= Auto Ecoder)など、学習/最適化の初期値を計算するための基礎構造を連結したネットワークを指す[11]。 |
WNN | ■WNNの学習による最適化。 ◇WNN = Wide Neural Network ◇広義にはWNNのうち特に階層が浅く、階層ごとのノード数の大きいネットワークを指す。 ◇狭義にはChenらの提案したBLS(= Broad Learning System)を指す[12]。 |
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準ニュートン法 | ■古典的な勾配法であるニュートン法を改良した手法。 ◇特に時間複雑性を大きく低減している。 ■ アルゴリズムには多くの変種が知られ、確率的最適化への応用も研究されている[13]。 |
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DFO(=Derivative-Free Optimization) | 遺伝的アルゴリズム | ■代表的な進化計算アルゴリズムの一つ[14]。 | |
差分進化 | ■代表的な進化計算アルゴリズムの一つ[15]。 ■遺伝的アルゴルズムなどと比較して、制御が容易かつ最適解への収束が比較的速い等の利点を持つ[16]。 |
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ベイズ最適化 | ■ ベイズ推定に基づく最適化手法。 ■ 一般にガウス過程回帰を用いる[17]。 |
分類 | 評価観点 | 概要 |
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モデル特性 | 収束性 | ■ 目的関数の複雑性に対する最適化過程の収束性。 ■ 目的関数の複雑性には、線形性/非線形性、滑らかさ/非滑らかさ、区分線形領域の数、区分凸領域の数といった様々な指標が候補となる。 ■ 必ずしも同一の複雑性指標ですべての最適化手法の収束性を評価する必要はない(多くの場合困難であり有効でない)。 |
モデル構造の複雑性 | ■ 目的関数の複雑性に対して必要となるモデル構造の複雑性。 ■ 例えばFFNNによる最適化の場合、層の数、各層におけるニューロンの数といった指標が候補となる。 ■ 必ずしも同一の複雑性指標ですべての最適化手法のモデル構造の複雑性を評価する必要はない(多くの場合困難であり有効でない)。 |
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確率論的特性 | 少数標本での精度 | ■ 少ない標本数の精度向上性能、ないしこれを強化するための補助手法を評価。 |
汎化性能 | ■ 汎化性能、ないしこれを強化するための補助手法を評価。 | |
実装コスト | ライブラリ/アプリフレームワークの充実度 | ■ 対象手法を実装したライブラリ、ないし対象手法をサポートするアプリフレームワークの充実度を評価。 |
インテグレーションコスト | アプリフレームワークをサポートするSaaSの充実度 | ■ 対象手法をサポートするアプリフレームワークがあるとき、当該アプリフレームワークでの実装をサポートするSaaSの充実度を評価。 ■ 実際のプロジェクトで評価する際には、システム要件に鑑みて、最適化過程の並列実行等に関する機能などより詳細な評価観点まで洗い出すことが望ましい。 |
オンプレミス/IaaS/PaaS上での実行環境構築コスト | ■ SaaSを利用しない前提での実行環境構築コストを評価。 | |
先行事例 | 先行事例の豊富さ | ■ 先行事例の豊富さを評価。 |
ハイパーパラメータチューニングの有効性 | ■ 自律化レベルとして【監督者補助付き制御パラメータ調整レベル】しか求めない場合は不要。 ■ ハイパーパラメータチューニングの対象手法に対する有効性を、先行事例での評価を基にメタ評価する。 ■ ハイパーパラメータチューニングの有効性は、基本的はモデル構造の複雑性で決定するが、実際の有効性は机上での予測が困難のため先行事例を参考とすることが望ましい。 |