アマゾンをたずねて三千里 – Amazon Go訪問レポート

2018.12.26 News

寒さが厳しくなる去る2018年11月、Amazon本社の1階にある食料品店「Amazon Go」を訪問してきました。そのレポートをお送りします。

いざ、シアトルへ

なぜ、シアトルか?
ラスベガスで開催されるre:Invent 2018に参加することが当初の目的でした。しかし、弊社内で議論を進めた結果、「Amazonのパワーをもっともっと感じようではないか!」との話に至り、Amazonの本拠地、シアトルも訪問することとなりました。
シアトルは米国ワシントン州の北西部に位置し、同州最大の都市です。テクノロジーとコーヒーの街として知られており、シアトルを本拠地とする企業としては、Amazon、Starbucksなどが有名です。

  • (Amazon本社 Day1)

Amazon Goとは

Amazon Goは、Amazonが米国のシアトル、シカゴ、サンフランシスコで展開する食料品店です(2018年12月1日現在)。消費者はレジに並ぶことなくに商品を購入することができます。
そのコンセプトは、次の通り。

  • (Amazon Go コンセプト)

 NO LINES, NO CHECKOUT.

行列なし、チェックアウト(出口精算)なし

(NO, SERIOUSLY.)

(冗談ちゃうで、ホンマやで。)

JUST WALK OUT SHOPPING

ジャスト・ウォークアウト・ショッピング
行列なし、チェックアウトなし、だと? そんなことをどのようにして実現しているのか、とても気になります。これはもう、訪問せざるを得ません。

Amazon Goの店内へ

それでは、2016年12月5日にオープンしたAmazon本社(Day1)にあるAmazon Go 1号店に入店したいと、、、思います!

(Amazon Go 1号店エントランス)

ゲート

エントランスを入ると、そこには入り口のゲートが4つ、出口ゲートが2つ、それぞれありました。

(ゲート:店内から外を眺める)

入店する、その前に。
Amazon Goでお買い物するためには、Amazon Goのスマホアプリをあらかじめインストールしておき、支払方法などの設定を完了させておく必要があります。amazon.co.jpのアカウントでも設定できると聞いていたのですが、私のスマホでは設定できず、amazon.comのアカウントを新規作成しました。

  • (Get the app)

さて、心のスマホの準備が終われば、アプリを起動し、ゲートにあるスキャナにQRコードをかざします。

  • (スマホをかざす窓)

さらに、拡大。

  • (スマホをかざす窓(拡大))

 店内の様子

店内の大きさは、小規模なコンビニエンスストアぐらいでしょうか。アマゾンのジャンパーを着た店員さんが商品をチェックしています。

(店内の様子:店員)

訪問したのが日曜日だったためか、品切れの棚もちらほら…。

  • (並ぶ、イッツ・ゴーン)

天井

レジのあるお店であれば、カートにある商品を1つ1つチェックして、精算するだけ。しかしながら、このAmazon Goにはレジがありません。入り口と出口のゲートをくぐるだけです。
入店した人と棚にから取り出した商品を、どのように紐付けているのでしょうか?
入店する際に、入店する人はAmazon Goのアプリをかざします(注:同行者はかざさなくて、よいです)。ですので、このタイミングで「誰」が入店したかは把握できます。
では、その入店した人が、どの棚から何を取り出したかを把握するには、どうすればよいでしょうか。俯瞰するには、、、上から見下ろすのがよいですね。と考え、視線を天井に向けたところ、青い目をしたセンサーに睨まれました。

所狭しと、少なくとも100を超えるセンサーらしきモノがいろいろな方面に向けて見下ろしています。このセンサーで、入店した人を追い続けているのでしょう。もしかすると、服装等の特徴も把握しているかもしれません。

棚のオモテ側

商品を陳列している棚も要チェックです。どの棚の何段目の商品をいくつ持ち出したのか?をどのように把握するのか、興味津々です。
理路整然と商品が陳列しています。海外のストアでこんなにも理路整然と商品が陳列しているのを私は見たことがありません。レジに店員を配備する必要が無いため、商品の陳列に力を注げる?のでしょうか。

(商品陳列その1)(商品陳列その2)(商品陳列その3)

販売されている食品は調理済みのものばかりなので、その場で飲食可能です。

(イートイン・コーナー:水、フォーク、ナイフなど)

  • (イートイン・コーナー:テーブル)

棚の形状に注目

商品棚の種類を観察すると、いくつかのパターンがあることがわかりました。
・直置き系

(商品陳列棚:直置き)

・前出しバネ系

  • (商品陳列棚:前出しバネを奥へ引いてみる)

・編みカゴ系

(商品陳列棚:編みカゴ)

棚の格段にある値札、その少し上を見ると、灰色のモザイクがかった長さが異なるマークがいくつか貼られています。1つの段に貼られているマークは、その長さ、マークとマークの間隔が異っています。しかしながら、どの段であってもそれらマークの位置は同じです。このマークの位置から、ある棚のどの縦位置付近の商品に手を伸ばしているのか?を検出しているのでしょうか。
しかし、消費者の目線から見える箇所を眺めていても、棚からいくつの商品を取り出したかを検知しているのか?が判然としません。普通に店内を歩いていれば見ない面を覗いてみることにしました。

棚の横

まずは、棚の横です。

(棚の横:棚番号と段番号)

シールを発見。棚単位にIDが割り当てられているようです。rack1、rack2、rack3、そして、棚の段毎にrow1、row2、row3のように番号が振られていました。これを組み合わせて、rack1.row1などと表現するんですね。なるほど、勉強になります。
ということは、これらを認識するためのセンサーがどこかにあるはず!ということで、さらに調査です。

棚の上

続いて、カメラを持った腕を前から上に上げて、伸び伸びと背伸びの運動です。

(棚の上:QRコード?なるもの)

をー、Band ID 15なる文字列とそれを表しているのであろうQRコードを発見。天井に設置されたセンサーはこのQRコードから、棚の位置を確認しているようですね。

棚の下

どの棚のどの段の商品を取り出したのかを、どのように観察しているのでしょうか。そこで、棚の下を覗いてみることにしました。

(棚の裏:マイク)

マイクがありました。このマイクからの入力により、(ある棚の)どの段にある商品を「ごそっ、ごそっ」と取り出しているのか?を確認しているのでしょうか。しかし、マイクが設置されていない棚(段)もたくさんあるんですよね。その棚(段)はどのように検知しているのやら。

棚の後ろ

編みカゴ系のケースは、その下方面と棚の段の面とが離れており、浮いています。アナクシマンドロスが提唱した「大地は宙に浮いている」とのモデルを想起させます。編みカゴの中にある商品を取り出せば、重量が軽くなってさらに浮く…

(棚の後ろ:CAT6ケーブル)

CAT6のケーブルが棚に刺さっています。おそらく、この編みカゴのケースは重量センサーが埋め込まれているものと思われます。そこで、私は考えました。ケーブルを抜くことにより、センサーが機能しなくなり、誤検知されるのではないか。もちろん、自制心が働き、実行はしていません。
しかしながら、この重量センサーが内蔵されているであろう編みカゴもすべての棚・段に設置されているわけではありません。普通に直置きされている商品は、一体全体どのようにしてその取り出された点数を検出しているのでしょうか。

例外もある

棚からの商品の取り出しは、センサーたちが頑張って監視をしています。しかし、一部の商品?は、センサーに頼らず、消費者(の善意)に頼っています。

  • (上段:無料のバッグ、下段:リユーザブル・バッグ)

上段の小さな茶袋は無料です。上段の写真には写っていませんが、大きなサイズの茶色のLarge Paper bagもあり、1バッグあたり0.05 USDです。Amazon色のリユーザブル・バッグは0.99 USDでして、結構丈夫な品となっています。これら有料のバッグは、スマホアプリからその持ち出し数を指定して購入する必要があります。

レシート

さて、調査購入が終わりました。出口ゲートはスマホをかざす必要もなく、普通に通り抜けます。それから、約10~20分後、amazonからメールが届きました。

Subject: Your November 26 receipt for 5 items
Thank you for shopping with us. Here is your receipt from your recent trip. You can view your full receipt in the Amazon Go app.

Amazon Go アプリでレシートに記載された商品を見てみたところ、

  • (Amazon Goアプリ上のレシート)

1点の曇りもございませんでした。恐れ入りました。

まとめ

Amazonが提唱する「Just Walk Out Shopping」。商品がいつ棚から取り出されるのか、いつ棚に戻されるのか、それらを自動的に検出し、商品を追跡する…、様々なテクノロジーを融合させることで、Amazon Goというモノを実現しているのだなと、見せつけられました。
これを体験するのに必要なモノは、Amazonアカウント、スマホ、そしてAmazon Goアプリだけです。あとは、米国への旅費。皆様も是非、このAmazon Goを体験してみてください!

おまけ

Seattleの夜に食した、シーフードです。

  • (シーフード)

カニをトンカチで叩いて食べるのは、いかがなものかと小一時間(略。

著者紹介

野口昇二
・インターネットとDNSをこよなく愛するアプリケーションとインフラのアーキテクト